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狂牛病が第2のエイズだという暴論 ウシが狂ったように死ぬから狂牛病。これが人間に伝染する、というから大騒ぎになった。が、ちょっと待て。「第2のエイズ」なんてウソ八百だ。 |
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話が複雑なので最初に整理しておこう。ここで問題になっている病気は二種類ある。 かたや、いま英国や欧州でパニックを起こしている牛の病気「牛海綿状脳症」(BSE。俗称『狂牛病』)。そして、それと似た病態を持つ人間の病気「クロイツフェルト・ヤコブ病」(CJD)。この二つはまったく別の病気である。 今回のパニックの発端は、英国のドレル保健相が三月二十日に議会でCJDとBSEの関連について出した答弁だ。九四年から九五年にかけて同国で見つかった十例のCJD患者について、これまで「CJDとBSEは無関係」としてきた「全面否認」見解を修正したのだ。
では、BSEが牛肉を通して人間に伝染してCJDを起こす、と科学的に断定されたのだろうか。答えはノーである。 BSEはイギリス特有の家畜病だ。米国農務省の報告によると、一九八六年にBSEが初めて発見されてから、医学的に確認された十五万五千頭のBSE牛のうち九九%以上が英国産。だから、英国にとってBSEは流行のたびに畜産業界が大打撃を受ける悩みのタネだ。業界保護のため、政府はBSEとCJDの関連を否定し続けてきた。 「それを修正したとたん、他の部分の説明が飛んでしまい、社会が過剰反応してしまった」(山内名誉教授)
もともとCJDとSBEには、関連づけてパニックを起こしやすい要素がいくつもある。 CJDとBSEは、どちらも脳が「スポンジ状」になる点がよく似ている。BESとCJDに侵された脳を顕微鏡で見ると、どちらも神経細胞にできた空胞で穴だらけのスポンジのように見えるのだ。 病原体として有力視されている「プリオン」は、本来は細胞の中で正常に機能している蛋白質だ。が、何らかの原因で異常プリオンに突然変異、分解されずに神経細胞にたまる。それが脳の神経細胞に空胞を作り、正常な機能を妨げる。牛の場合、立てなくなる、興奮しやすくなるなどの症状が現れるため「狂牛病」と呼ばれるのだ。 このプリオンを完全に滅菌するのは難しい。通常の調理温度の熱では死滅しない。紫外線や酸にも強い。これもパニックを呼んだ要因のひとつである。 実はBSEは、元々は牛の病気ではない。「スクレイピー」という羊の病気が牛に伝染したことが明らかになっている。原因は、スクレイピーで汚染された羊肉を知らずに牛の餌に混合したことだった。ある動物の病気が別種の動物に伝染することを「種の壁を越える」と言う。羊と牛の種の壁を越えた以上、牛と人間にも同じことが起きるのではないか、と疑いが膨らんでいたわけだ。 英国政府が見解を修正するきっかけになったのは、九四年から九五年にかけて発症した十例のCJD患者の調査結果だ。今までのCJDでは考えられない特徴がいくつも見つかったからだ。 例えば、これまでの患者は六十三歳以上だったのに、十歳代二例、二十歳代七例、四十歳代一例と若い。なのに、牛に触れる仕事をしていた、CJD患者から知らずに移植手術を受けたことがある、などの高リスク要因が見つからなかったのだ。
では、これらのケースは、BSEに汚染された牛肉を食べたのが原因なのだろうか。英国政府の答弁の修正の諮問機関「海綿状脳症諮問委員会」勧告原文は、その点にはまったく触れていない。 この十例にしても、CJDが集団発生したわけではない。実はCJDは、BSEの有無にかかわらず百万人に一人弱の確率で発生する病気だ。
「例えば、日本の牛にはBSEの報告はないが、CJDには毎年百二十から百三十人がかかります」 この発生率は世界中どこでもほぼ均等。人口五千七百万人余りの英国では、九四年に五十四例が見つかった。BSEの多い英国にしては多い数字ではない。牧畜関係者の間にCJDが多いという事実も今のところない。
「日本にいる限り安心でしょう」 八九年、英国政府はBSE病原体が集中する脳神経や脊髄、胸腺などを除去して精肉処理をするよう義務づけた。問題になっている十例のCJD患者は、関連があったとしても八九年以前に感染したのが潜伏期を終えて発症した、というのが政府の見解だ。例え発症しても、移植や医療事故などを除けば、CJDは人間から人間には伝染しない。
(AERA 96.4.8) |
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