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■裁判官室協議の詳細■ オリコン「もう裁判やめたい。負けてもいい」 裁判官「一審判決は誤りだった」
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今となっては滑稽話ですが、高裁での協議が始まった当初から、オリコンは「裁判をやめたい」と弱気でした。一審で勝ったのに、どうしたことでしょう。 じゃあ、烏賀陽の要求をのんで謝罪すればいいのに、なぜか(メンツにこだわったのか)「烏賀陽もケジメに何か言え」(まるでヤクザみたいな要求ですね)などの馬鹿げた要求をしては、自分で自分を追い詰めていった。 滑稽ですね。 でも、オリコンが弱気になるのは当然なのです。 ●提訴の根拠が吹き飛んで「もう裁判やめたい」 08年9月16日の第1回口頭弁論に先立つ同12日に、烏賀陽側は「サイゾーの誌面に掲載されているコメントは捏造であり、烏賀陽の承諾を得ていない」というサイゾー小林稔和副編集長と揖斐憲編集長の証言を証拠提出していたからです。 当然、法廷に出した証拠はオリコンにも届きます。オリコンは、私に電話取材して係争の記事を書いた小林稔和副編集長と、その記事を掲載した揖斐憲編集長の証言を読んでいます。
オリコンの悪意ある提訴は、足下が崩れてしまった。これは滑稽ですがオリコンにとっては笑えない深刻な事態です。 オリコンは(少なくともオリコンの弁護士は)ここで自分たちがドツボにはまったことを悟ったはずです。 もしオリコンがサイゾー証人二人の証言を崩せる自信があるなら、証人尋問を裁判所に申請するはずだからです。 「裁判官の前で証言を突き崩して、信用性を否定する」というのが相手に有利な証人を潰す常道です。 ところが、オリコンはサイゾー証人2人の尋問をまったく申請しませんでした。おそらく尋問しても潰せないことを証言の文面を読んだ悟ったのでしょう。 その後、協議でのオリコンはメロメロの迷走を始めます。 証拠が出たあとの初めての協議(08年10月3日、第2回)で、黒津英明裁判官は次のようにオリコンの意志を伝えてきました。 「(オリコンにとっては)AERAの時のほうが問題だったのだそうだ。(サイゾーに烏賀陽の名前で)また出たので何もしないわけにはいかないと判断した。我々(オリコン)としては見逃すわけにはいかないと思った。(小池恒)社長は(訴訟は)ケジメとしてのアクションだったんだし、時間も経ったから、もう強硬なことはしないという気持ちになっている」 ここまでは「軟化」の兆しなのですが、ここからオリコンの作戦ミスが始まります。 驚いたことに、こう言ってきたのです。
要は「烏賀陽が謝れば提訴を取り下げてやる」と言ってきたのです。 私は怒りました。オリコンの名誉など配慮する必要はありません。私はその場で拒否しました。さっさと証人調べをして判決を出してください、と要求しました。 ところがオリコンは判断を誤って事態を悪い方向へ導きます。 「むこう(オリコン側)はもうやめたい雰囲気だ。できるだけ譲歩させる。3人の代理人も一枚岩でないみたいなので、伝え方を工夫している」
●テレビ取材が入って「もう負けてもいい」 11月11日の第4回協議になると、オリコン側の窮状がよりいっそう鮮明になります。黒津裁判官ははっきりオリコンの提訴への疑問を表明し始めます。
「オリコンに訴訟をやめさせるには、『誤解的な印象を与えたとしたら遺憾である』のような遺憾的なコメントを出すことはできないか、と聞いてきた」 烏賀陽が「ケジメ」になるような一言をなにか言ってくれれば、提訴を取り下げるというのです。あほらしい。顧みるだに値しない。 08年11月26日の第5回協議の直前、TBSのドキュメンタリー番組「報道の魂」がオリコン裁判の取材のためにオリコンを訪れます。オリコンの態度が急変するのはこのあたりからです。 闇に紛れて烏賀陽を潰すことができると思ったのに、どんどん世論の批判が高まった。これ以上世論を敵に回すのはまずいと思い始めたようです。「訴訟は間違いだった」とさえ言い始めるのです。 黒津裁判官「TBSの取材がオリコンに入ったそうだ。ネット上でも取り上げられているし、収束したほうがいいという判断にオリコンは傾いている。社内的にも解決したいと思っている。裁判所が間に入って柔軟に解決したほうがいいと思う。サイゾー、インフォバーンが間に入るのも意味があるだろう」 烏賀陽側・飯田正剛弁護士「和解は難しい。こちらは判決一本槍で求めている」 黒津裁判官「(オリコンは)サイゾーも訴えたかったようだ。出版社を訴えることも考えたようだが、タイミングが悪くて控訴審に入ってしまった」「立場がにじみ出るようなやり方はあるでしょう。またオリコンは弱気なんですよ」 烏賀陽側・日隅一雄弁護士「フリー記者として損害を被っているので、オリコンに損害賠償をしていただきたい」 黒津裁判官「(オリコンの提訴は)『AERAの記事の時に言うことだ』という考え方のパターンはあります。(オリコンは)どちらかというとAERAの記事を訴えたかったんです。(オリコンはサイゾーの記事も)烏賀陽のせいだと思った。共通の根っこは烏賀陽だ、と。でもAERAは時効をすぎたという経過がある。だからいま向こう(オリコン)は『訴訟やったのは間違いだった』と言っている。『サイゾーが悪いんだ』とおっしゃってくだされば『烏賀陽を訴えて遺憾だった』と言う用意が(オリコンには)ある。ネット上の批判も強くなってきたので、矛を収めたい」 烏賀陽側飯田弁護士「一審判決のような判例が残ることは何としても避けたい。金銭的賠償のこともある」 黒津裁判官「訴えの取り下げという選択肢もオリコンにはある。『誤解で訴えてしまったので取り下げも考えている』とオリコンは言っている」「一審判決(烏賀陽に100万円に支払いを命じた東京地裁判決)にしても、サイゾーが入っていないからそうなっちゃう。サイゾーに第三者として入ってもらうのも一案。烏賀陽の事件というよりはもう一人足りないという印象がある」 オリコンはとうとう「負けてもいい」「取り下げでもいい」と言い出します。
同「本件コメントが与えた印象について遺憾の意を表明してほしい、何か一言ほしい、というのがオリコンの立場のようです」 (烏賀陽側はその場で拒否。むしろオリコンが提訴を濫用したことを謝罪し、経済的な損害を賠償するのが筋だと話す)。 同「確かに、提訴がまずければ金払って謝罪するのが筋なんだが、提訴したものをやめること、取り下げることは、無様で屈辱的だ。一審勝っているだけになおさらだ。オリコンは『今は負けてもいい』と言っている。実質的にはそれで烏賀陽の勝ちだ」 同「和解は活用できるものなら活用したほうがいい。相手はいま弱気だ。判決を書くとなかなか杓子定規で細かいところまでは行き届かない。あなたの苦しい立場もわかる。今のまま呑めというのも無理でしょう。今すぐどうしろとは言えないので、ちょっと考えてください」
●裁判官と二人きりで意見交換「地裁判決は誤りだった」 最後に10.45-11.00の15分間、黒津裁判官は烏賀陽を誘って十五分弁護人抜きで二人で話し合いたいと提案しました。 裁判官とサシで本音のやりとりをするのです。これは裁判でもたった一回しかなかった貴重な体験でした。 黒津裁判官「オリコンは、本件サイゾーコメントよりはAERAにあなたが書いたことを気にしている。本件コメントが与えた印象について遺憾の意を表明してくれるならり、何か一言ほしい、というのがオリコンの立場です」 烏賀陽「提訴がまずかったのなら、提訴で私が被った経済的損失を補償する賠償金を払ったうえで謝罪してもらえればそれでいいじゃないですか」 裁判官「取り下げ、裁判やめるってことは無様で屈辱的です。一審勝っているだけになおさら無様です。でもオリコンは今はもう負けてもいいと言っている。実質的には烏賀陽さんの勝ちですよ、これは。サイゾーを訴えることで、サイゾーに慰謝的なことをさせることもできます」 裁判官「サイゾー掲載のコメントはオリコンにとって核心を突いたものだったらしいです。オリコンには挑発的だったようですね。そういう意味で向こうを引っ張り込んだというところがある」 烏賀陽「しかしサイゾー掲載のコメントは私が話した内容とは関係のない内容が掲載されていますから」 裁判官「情報提供者の責任はどうなんだ、とオリコンも攻め立てているんです。和解は譲ることばかりじゃありません。活用できるのなら和解を活用したほうがいい。判決はなかなか細かいところに手が届きません。今すぐどうこうしろとは言いませんので、ちょっと考えてください。いま相手は弱気ですから」 烏賀陽「今のまま呑めというのは無理でしょう」 裁判官「呑めとは言えません」 烏賀陽「法廷でサイゾー証言を見ていただいたうえで和解を進めるか判決するか決めていただいてはどうでしょう」 裁判官「あなたの苦しい立場はよくわかる。(サイゾーの取材依頼を)断ったら仕事が来ないのでしょう。裁判所はイヤがっていても仕事が来ますから(笑)。当事者として(裁判が)どう終るかはわからないでしょう?呑んだ方がいい時には強く申します。まだ、という時は言いません。無理強いはしません。まだその時でもありません」 烏賀陽「(一審判決が)このままではジャーナリストたちの取材の自由を妨害するお墨付きを残してしまう。絶対に容認できません」 裁判官「あの判決は誤りだった。こういう形での先例がないようにします。(オリコンは)撤退に追い込まれたという形にします。(オリコンの提訴のような、嫌がらせ目的は)そういうことができないようにします」
●サイゾー揖斐証人が協議に参加 こうして08年12月24日の第7回協議から、サイゾー揖斐編集長が利害関係人として協議に加わります(相変わらず烏賀陽側、オリコン側とも同席はしません)。 しかし、サイゾー揖斐編集長本人が協議に現れ「サイゾー掲載の『烏賀陽コメント』は捏造だった」と裁判官の面前で全面的に認めてしまったのですから、オリコンにとってもはや裁判に勝つ可能性はこの時点でゼロです。 オリコンはここから先はまったく退路を断たれてしましました。どうあがいても敗北への道まっしぐらです。 烏賀陽、オリコン、サイゾー3者での協議がしばらく続いた。裁判官は揖斐証言の整合性を確かめているようでした。 このあと、高裁は烏賀陽側に「これなら呑んでもいいという和解案」をつくってくれないかと提案します。 それを烏賀陽側が示したのが09年3月18日の第12回協議でした。 こちらが出したのは「オリコンの烏賀陽への謝罪」と「オリコン、サイゾー二社による烏賀陽への損害賠償」でした。その時点で烏賀陽の経済的損失は約1000万円でしたので、サイゾー、オリコン折半で500万円ずつはどうかと提案しました。サイゾーは素直に非を認めて支払いを受諾しましたが、オリコンは逃げ回り続けました。 もう手持ちのカードがないのに(和解条件を交渉しても今より悪くなるに決まっている。究極的には判決に進めば必ず負ける)条件闘争でゴネ続けるのがオリコンの不思議なところです。 自業自得といいますか、ゴネればゴネるほど、裁判所の心証は悪化し、どんどん条件が悪くなっていきました。 「烏賀陽への賠償はイヤだ」。 こうして、オリコンは「請求放棄」という屈辱の極みへと自分を追い込んでいくのです。
●謝罪していればオリコンを批判しにくくなっていた 「もし」を考えてみましょう。最初の時点でオリコンが烏賀陽への謝罪と補償を呑んでいれば、どうなっていたでしょうか。 裁判は烏賀陽も合意したうえのでの「提訴の取り下げ」(つまり訴訟としては引き分け)による終結でした。考えようによっては、これは素晴らしい条件だったはずです。企業市民として非を認め、謝罪し、補償する。そして訴訟は両者の合意によって引き分け。 これがオリコンに残された最後の「名誉ある撤退の道」でした。 もしオリコンがこの時点で「謝罪と補償」という企業責任を果たしいてたら、私はこの後オリコンを非常に批判しにくくなっていたはずです。 なにしろ非を認めて謝罪して、あまつさえおカネまで払ってしまっているのですから、私は提訴自体に遡って批判することすら難しくなってしまう。 おカネまで頂戴しては、批判しては何だか申し訳なく思えてしまう(笑)。 批判やSLAPPについての追及を続けていたら「謝っている相手に何をいつまでも石を投げているのだ」とこちらが非難されていたかもしれません。 ところが、オリコンは「過ちを認めない」というメンツにこだわるあまり、もっとも愚かしい選択をしました。 「反社会的企業」と名指しできます。 とはいえ、インターネット哲学者の諸野脇正氏のように「ヤクザ以下」と非難される論客もいますから、私の批判はまだ優しいほうではないでしょうか。
(2009.11.16)
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