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■裁判所が判決を出さなくても勝訴できるんですね!■ オリコンの「請求放棄」=「自己敗訴宣言」なので、烏賀陽側の勝訴
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「判決を裁判所が出さなくても、裁判に勝つってことができるんだなあ」。 僕も今回初めて学びました。 それが今回オリコンが東京高裁で宣言した「請求の放棄」です。 よく似た言葉に「提訴の取り下げ」があります。実はこの二つ、まったく別の法理なんです。僕も最初、区別がつかず、「何じゃそりゃ?」と混乱しました。 「請求の放棄」とは何か? 簡単に言うと、裁判所の判決を待たずに「私たちの提訴は間違っていました。自分で敗訴を宣言します」という裁判手続きです。しかも、この請求放棄には、烏賀陽側の同意が必要ありません。勝手にオリコンが決めてしまったのです。 正直、びっくりしました。こちらは判決をはやくしてくれ、そのための審理を早く公開の法廷で開いてくれ、と裁判官に言っていたのに、オリコンが勝手に「自決」してしまった。 戦争に例えれば、こういうことでしょうか。 明日は敵陣地に突撃だ、と戦闘を準備していたのに、敵軍が戦闘が始まる前に白旗を掲げてしまった。あるいは、敵兵が全員勝手に「自決」してしまった。 こうなっては、戦闘しようにも相手がいないではありませんか。戦争は終結。つまり「請求放棄」は「降伏宣言」なのです。 つまりこのオリコン-烏賀陽裁判は東京高裁で「烏賀陽の不戦勝」になってしまったのです。 「自己破産宣言」という言葉があります。請求放棄はそれに似ています。言うなれば「自己敗訴宣言」です。
●オリコン請求放棄は確率0.1%以下の珍事 最高裁の「司法統計」(平成19年版)によると、原告(裁判を起こした側のこと=オリコン側)の請求放棄で終結する訴訟は、全体の0.1%しかないそうです(17万2975件中180件)。 オリコン裁判のような控訴審では、3228件中たった4件。 つまり全国で年4件しか、今回のような請求放棄という結末は起きないのです。 しかも、オリコンは東京地裁(08年4月22日)での一審で勝っているのです。一審で勝った側は、当然二審の高裁でも勝つ確率が非常に高い。そのオリコンが「自己敗訴宣言」するとは、おそらくは日本の裁判の歴史に残る珍事でしょう。 「烏賀陽は裁判の結果が自分に有利に見えるように勝手な理屈をでっちあげている」と思われると困りますので、証拠を示しておきましょう。 弁護士や裁判官、検事など、法律の実務家ならまず読んでいる定番教科書「法律学の争点シリーズ5 民事訴訟法の争点」(ジュリスト増刊/有斐閣)から引用します。 「請求の放棄とは、原告が訴えをもって提示した請求の全部又は一部の理由のないことを原告自身が認めること」(258ページ) 「請求の放棄は、原告が請求の当否について審判を申し立てながら、その請求について自らこれを否定する陳述をする結果、裁判所の裁判を経ることなく請求についての紛争が解決したことが明確になるため、被告全面勝訴という形での紛争解決規準を確立して、訴訟が終了するのである」(同) どうでしょうか。 私が「全面勝訴」「逆転勝訴」を宣言した理由がおわかりいただけるでしょう。 もう一度言います。「請求放棄」とは「自己敗訴宣言」なのです。烏賀陽は勝ち、オリコンは自滅したのです。 「そんなこと、法律家なら誰でも了解している常識」 「司法試験受験生でも真っ先に勉強することじゃないか」 私の周囲の法律家はそう口を揃えています。当然オリコン側の敏腕弁護士である笹浪雅義、中島秀二、高村健一の各先生もご存知のことでしょう(三先生のすご腕ぶりには本当に敬服しました)。みなさんも、弁護士さんや検事さん、法学部の先生が周囲におられたら、聞いてみてください。 (ついでに『提訴の取り下げ』とは何か、補足しておきます。 そして『提訴取り下げ』で終結した訴訟には『勝ち負け』はありません。訴訟そのものがなかったことになるのですから。まあ、言っちゃなんだが、争いは止まりますが、それ以外は何の解決にもならない。 『請求放棄』が『提訴取り下げ』といかに違うか、おわかりいただけますね)
●「勝訴的和解」なんてレトリックは不要。「勝訴」が事実。 よく「勝訴的和解」「実質的勝訴」などという言葉を使う人がいますが、このオリコン裁判の終結にそんなつまらないレトリックは必要ありません。「事実」として、私はオリコンの「自己敗訴宣言」で不戦勝=勝訴した、させてもらったのです。 (実際『勝訴的和解』という言葉は勝てなかった人を慰める言葉として使う事が多い。記者として取材する立場としての私は『勝訴的和解をしました』と記者会見で強調する弁護士を『この人、苦しい弁明してるなあ』と内心思っていました) このオリコンの自己敗訴宣言で、オリコンの訴えが消滅してしまった。 決闘で「いざ」と刀を抜いたら、相手が勝手に「御免!」と「切腹」しちゃったのです。こちらは抜き身の刀を持ったまま「一体これは何やねん?」と呆然と立ち尽す(笑)。というわけで、烏賀陽が起こしていた反訴も続ける理由がなくなりました。それで烏賀陽も反訴請求を放棄しました。 このオリコンが請求放棄→烏賀陽がそれを受けて請求放棄という順番は、ちゃんと和解条項に明文化されています。PDFファイルをダウンロードしてみてください。 私は東京高裁の黒津英明裁判官に「これは、オリコンが本訴を請求放棄したので、烏賀陽は反訴する対象の訴訟がなくなったので放棄する、という順番ということで理解してよろしいのですか?」と直接対面して確認しました。黒津裁判官は「その通りです」「そう説明していただいて構いません」とおっしゃったので、私は自信を持って断言します。 こっちはせっかく「オリコンさん、あなたの提訴は理由(物事の成り立っているすじみち/広辞苑)がないですよ」と反訴したのに、オリコンが自分から「はい、烏賀陽さんの言うとおり、私の提訴は理由がありません」と宣言しちゃった。 困りますよ、オリコンさん。 せっかく反訴であなたの提訴が批判封じのいやがらせ訴訟(SLAPP訴訟)だと証明する予定だったのに!(いやまあ、手間を省いてもらったのでお礼を言わねばなりませんね。オリコンさん、ありがとうございます) というわけで、こちらの意志とは無関係に、戦闘は終結しました。 戦争に例えれば(戦争の例えばっかりですみません)敵兵が白旗を掲げて降伏宣言している敵陣に突撃、両手を挙げている敵兵を皆殺しにする必要はない。すでに自決した敵兵の死体にタマを撃ち込む必要はない。 近代戦では、一方の降伏宣言で、戦闘は終結するのです。
●烏賀陽なら判決で負けた方がマシだと思う 請求放棄という負け方は裁判ではもっとも惨めな負け方です。自分で自分の提訴が「間違っていた」と天下に宣言するのですから。 私なら「判決で負けた方がまだましだ」と思います。判決で負けても「あれは裁判所の判断だ」「主張が認められず残念だ」と責任を裁判所になすりつければいい(笑)。言い逃れはいくらでもできます。 でも請求放棄はオリコンが自分で決めたことです。誰のせいにもできません。 これだけの大事件ですから、当然「請求放棄でいい」という小池恒社長の決裁も取っているはずです。 言い逃れのしようがない。こんな負け方をして、株主にどう説明するのでしょう。余計なおせっかいですが、心配です。 まあ、最後はサムライになったつもりで、潔く切腹したということなのかもしれませんね。もしそうなら「敵ながら最期だけはあっぱれ」です。 さて。では、なぜこの訴訟の終結には「和解」という形が取られたのでしょうか。これがまたややこしい。みなさんの理解を妨げています。次回はこの点をご説明しましょう。 (次へ) (2009.8.5)
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